演劇や音楽等を通じた次世代育成
あるときは冒険の旅へ、またあるときは魔法の国へ。人形劇で繰り広げられるワクワクドキドキの世界。
オリジナル人形劇を制作し、子どもたちに公演活動を行う熊本大学のサークル「青い鳥」は、半世紀以上も前から子どもたちに夢を与え続けてきた。
2016年12月に熊本市内の教会で行われた公演の様子を見学し、同サークル第52代会長の野田智之さん(理学部3年)と副会長の阿部加奈子さん(法学部2年)に、活動にかける熱い思いを伺った。
「青い鳥」はどのような活動をされていますか?
県内各地で子どもたち向けのオリジナル人形劇を公演
人形劇サークル「青い鳥」は、子どもに夢や希望、喜びを与えることを目的に、公民館や小学校で、人形劇や紙芝居、手遊びなどの公演活動を行っています。最近は熊本地震で被災した地域の公民館などから依頼を受けて、人形劇の公演を行う機会も増えました。活動範囲は、熊本市内だけでなく、阿蘇や天草など、熊本県内の小学校や公民館で巡回公演も行っています。
「青い鳥」の歴史は古く、結成は1965年です。それ以来「子どもに夢を…」というスローガンのもと、毎年オリジナル人形劇を作成し、公演しています。
劇の脚本、人形や舞台装置の制作、音響効果、演出などはすべて自分たちで手がけたオリジナルのもの。公演までのプロセスを簡単に説明すると、まず始めに脚本を書き下ろした後、登場人物である人形のデザインをメンバー全員で話し合い、人形制作を行います。小道具や舞台も手作りし、大がかりなものは高さが3メートル、横幅が10メートル程度の大きさです。人形などの準備が整ったら、ようやく劇の稽古に入ります。人形の演者はもちろん、音響効果、照明などの裏方も含め全員が力を合わせて、一つの舞台が成り立っています。
人形劇の公演では、どのような工夫をしていますか?
人形に命を吹き込み、劇の世界へいざなう
人形劇の公演中に、私たちの手や頭が見えてしまうと、子どもたちが物語の世界に集中できなくなってしまうので、手黒子、頭黒子をつけて、演者が見えないようにしています。人形劇をするときは、人形を頭上にかかげた状態で、上体を深く傾け、中腰でセリフを言ったり、走り回ったりするので、体力勝負です。特に夏は、黒子をかぶると、地獄のような暑さになってしまいます。一方で、かぶり物をすると声がこもって聞こえにくくなるので、いつもより大きな声ではっきりと発音するように気をつけています。それから、演者が動くときの足音が聞こえないように、裸足で上演しているので、冬場はちょっと辛いです。
しかし、このような工夫をすることで、人形が本当に生きて動いているように見せられるので、子どもたちを物語の世界へいざなうことができます。
ゲーム世代の子どもたちの人形劇に対する反応はどうですか?
今も昔も、人形劇に興味津々!
今の子どもたちは、スマートフォンやゲームなどデジタルなものに囲まれて生活しています。だからといって、アナログな人形劇には興味がないかといえば、そういうわけではありません。私たちは、子どもたちが人形劇に興味を持ってくれるように、例えば、流行のギャグを劇中に取り入れてみたり、大げさに動いてみたりする工夫をしています。
人形劇をやっている最中に、突然「この小学校に、敵がやってきた!みんなで戦おう!」という設定をプラスして、盛り上げることもあります。自分たちが普段生活している小学校に、ワクワクするような物語を組み込んであげると、子どもたちの目が輝き出すんです。時代や環境が変わっても、子どもたちの本質は、昔も今もそんなに変わっていないように感じます。
半世紀以上の長い歴史の中で引き継がれてきたものはありますか?
子どもが楽しむ心を、自分たちの喜びに
「子どもに夢を…」というスローガンは、1965年に「青い鳥」が結成して以来、ずっと引き継がれてきました。私たちは、このスローガンに込められた意味や思いについて、メンバー全員で話し合いをします。ある人は、「ワクワクすることが、子どもに夢を与えることではないか」と考えますし、また別の人は「笑ったり、泣いたり、心が揺さぶられれば、それが夢を与えることにつながるのではないか」と考えます。その答えは、人それぞれで、どれも正解といえます。
話し合いの結果、私たち第52代は、「子どもたちを楽しませることが、自分たちの喜びに変わる。そのことが、子どもたちに夢を与えることにつながる」と解釈し、それに基づいてオリジナル劇の作成や公演内容の構成を決めることにしました。
人形劇を通じて、子どもたちに伝えたいことは何ですか?
人形劇から色々なことを感じて欲しい
私たちには、人形劇約10作品をはじめ、紙芝居やパネルシアター、手遊びゲームなど約40のレパートリーがあります。50年以上の歴史がある割には、レパートリーの数が少ないと感じられるかもしれません。それは、毎年、いい作品だけを残して、後輩たちに引き継いできているからです。
子どもたちから公演の感想文をいただくことがあるのですが「自分の意見を、ちゃんと人に伝えることが大切なんだと思いました」とか「こんなに楽しい劇になったのは、青い鳥の皆さんが一生懸命練習をして下さったからですね」などの言葉が書いてあり、自分たちの劇を通じて、子どもたちが色々なことを感じてくれていることが伝わってきて、嬉しくなります。
子どもたちから公演の感想文をいただくことがあるのですが「自分の意見を、ちゃんと人に伝えることが大切なんだと思いました」とか「こんなに楽しい劇になったのは、青い鳥の皆さんが一生懸命練習をして下さったからですね」などの言葉が書いてあり、自分たちの劇を通じて、子どもたちが色々なことを感じてくれていることが伝わってきて、嬉しくなります。
制作や練習に時間を費やしたり、子どもたちと近い距離で接することができるのは、大学生ならではの特権です。これからも、子どもたちに夢を届け、ワクワクさせるような劇をたくさん上演していきたいと思っています。
人形劇でみらいに夢を届けるために
「メンバー同士の話し合いは、いつも真剣勝負。みんなが意見を遠慮なくぶつけ合うので、かなり激しいですよ(笑)」と野田会長。
歴代の先輩たちから引き継いできた「子どもに夢を…」というスローガンの意味をとことん突き詰め、こだわってオリジナル劇を作り上げている。それらは、全て、子どもたちのみらいに夢を届けるため。
子どもたちに接するときの優しい笑顔の裏側には、真摯に活動に取り組むメンバー一人ひとりの姿勢がある。
その真摯なまなざしこそが、このサークルが半世紀の長きにわたって、子どもたちに愛されてきた理由のひとつかもしれない。
団体プロフィール
熊本大学サークル 青い鳥
1965年に結成し、今年53年目を迎えるサークル。熊本大学の数ある部活やサークルの中でも長い歴史を持つ。
「子どもに夢を…」をスローガンに、子どもたちの笑顔のために、ワクワクしたり勇気がでるようなストーリー展開の人形劇などを用いた公演を、熊本県内各地で年間約5回程度行い、子どもたちに夢を届けている。
子供のころ、人形劇が大好きでした!
このような活動が、若い力で50年以上も続いていることは、素晴らしいと思います!
こどもにゆめを! 40年前、私もこのスローガンのもと阿蘇や人吉などの小学校や熊本市内のこども会などで人形劇や影絵、童話口演などをしました。
今もなお後輩たちが頑張っていることを知り、胸が熱くなりました。
想像力は、思いやりにつながります。人形劇で、想像力を育てる活動を応援します。
小さいころ人形劇が大好きでした。
今はプロジェクター等が進化して、テレビがない屋外などでも映像を映してアニメ等を見ることができるようになったため、人形劇のような温かみがあるものは少ないと思います!
ぜひとも頑張ってください!