子育て支援
北九州市を拠点に、コミュニケーションや対人関係が苦手な子どもとその保護者をサポートしている「一般社団法人キャリアサポートクラブ」。当財団の助成により会員外の方にも広く呼びかけて実施した、保護者のための健康運動教室を訪れ、事務局長の樋口陽子さんや理事の廣田普美江さんをはじめ、保護者の方々にお話を伺った。
「キャリアサポートクラブ」はどのような活動をしていますか?
コミュニケーションが苦手な子どもとその保護者を支援
「キャリアサポートクラブ」では、主に、コミュニケーションや対人関係が苦手な子どもたちを対象とした社会参加へのサポートと、その保護者の悩みやストレスを軽減するための支援をしています。現在の会員は小学生6名、中学生以上が8名で、北九州市だけでなく直方市や宗像市など、幅広い地域から参加しています。活動では、子どもたちの社会参加に必要な力や仲間意識を育むために、毎月さまざまな社会体験をしています。魚釣りでアウトドア活動をしたり、市民センターのお祭りでカフェの出店をしたり。他にも、企業の協力をいただいて職業体験をすることもあります。例えば、ゴルフ場で掃除やおしぼりたたみをしたり、「いのちのたび博物館」で学芸員のように化石発掘作業をするなどの就労を体験することで、自立への手がかりにしています。
保護者は16名が参加しており、定期的な茶話会を行い、ときにはリラックス体操や子どもの発達に関する講演会などを開催しています。
保護者は16名が参加しており、定期的な茶話会を行い、ときにはリラックス体操や子どもの発達に関する講演会などを開催しています。
活動を始めたきっかけを教えてください。
子どもとの関わり方を学ぶ「ミツバチの会」の中から現在へ
約15年前に、事務局長の樋口と数名の保護者が、発達障害や知的障害を持つ子どもと保護者のための「ミツバチの会」を作ったことが始まりです。当時は障害者福祉制度が不十分で、放課後のデイサービスや子どもの預かりサービスがなく、子どもが下校すると保護者はいつも子どもに付き添っていました。ときにはパニックになったり暴れたりする子もいるため、子どもとの関わり方が分からず、深く悩む保護者も少なくありませんでした。そこで専門家である樋口が、発達障害や知的障害の子どもの動作訓練技法を切り口にして、保護者に子どもとの関わり方を伝えるために発足したのが「ミツバチの会」です。やがて、入会時に小学生だった子どもたちが成長して中高生になり、その中の知的遅れのない子どもたちには社会参加のための体験や練習が必要になったことから、平成26年に新たに「一般社団法人キャリアサポートクラブ」を発足。企業での就業体験も実施しやすくするために法人格を取得しました。
どのような取り組みで保護者をサポートしていますか?
孤立しがちな保護者に「一人じゃない」という安心感を
保護者向けの茶話会や専門家による勉強会を開いたり、体操によるストレスを発散などのプログラムを、年間を通して実施しています。取り組む内容はさまざまですが、これらの活動は、発達に課題を抱えている子どもと保護者の生きづらさを共有し、子どもの社会的自立に前向きに取り組むことが目的です。
茶話会に来る保護者たちは、困っていても相談できる相手がおらず孤立しがちで、心に溜まっていたものをここでやっと話せる、という方も少なくありません。話を聴くのも同じ思いの保護者たちなので、気持ちを分かち合い「一人じゃないという安心感が持てる」と参加者の方はおっしゃっています。
保護者同士の話し合いでは解決の糸口が見えない問題は、専門家を招いたときに相談しています。発達に関わる障害を理解したり、子どもとの接し方を学んだりして親子関係をより良い方向に導いて、ストレスの改善に役立てています。また、個別の悩みにも具体的な答えや対処方法を教えてもらえるので、保護者にとっての心強い味方です。
茶話会に来る保護者たちは、困っていても相談できる相手がおらず孤立しがちで、心に溜まっていたものをここでやっと話せる、という方も少なくありません。話を聴くのも同じ思いの保護者たちなので、気持ちを分かち合い「一人じゃないという安心感が持てる」と参加者の方はおっしゃっています。
保護者同士の話し合いでは解決の糸口が見えない問題は、専門家を招いたときに相談しています。発達に関わる障害を理解したり、子どもとの接し方を学んだりして親子関係をより良い方向に導いて、ストレスの改善に役立てています。また、個別の悩みにも具体的な答えや対処方法を教えてもらえるので、保護者にとっての心強い味方です。
やりがいを感じるのはどんなときですか?
悩みを乗り越えたことを一緒に喜び合えるとき
保護者に笑顔が増えることが一番嬉しいですね。参加し始めたばかりの保護者には、八方塞がりの状況でここに来て、泣いてばかりの方もいらっしゃいます。それが何年か経つうちに、ある日からパッと晴れやかに変わるときがあるんです。大変な時期をずっと一緒に過ごし、一緒に悩んだり心配したりしてきた方々同士なので、それを乗り越えたときには「良かったね~」と、お互いに喜び合っています。
参加当初は子どもの悩みで憔悴しきっていた保護者から、「会への参加を重ねるうちに、子どもと適度な距離をとれるようになった」といった話を聞くこともあります。そういった明るい変化や、保護者の方々の笑顔をみたときに、この活動をしていて良かったと心から思います。
参加当初は子どもの悩みで憔悴しきっていた保護者から、「会への参加を重ねるうちに、子どもと適度な距離をとれるようになった」といった話を聞くこともあります。そういった明るい変化や、保護者の方々の笑顔をみたときに、この活動をしていて良かったと心から思います。
今後の活動について、展望や目標を教えてください。
支え合うための繋がりの場として、一緒に子どもの成長を見守りたい
悩んでいる人にとっては、話を聴いてあげるだけでも大きな支えになるので、今後も、茶話会を中心とした活動を継続して、保護者同士が支え合える人間関係を築く場としてあり続けたいです。お互いが同じように苦しい思いを経験してきたので、話を聴いて深く共感したり、「大丈夫?」と気づかったり、自分たちの経験や学びに基づいて「こうしてみたら?」と提案するような温かなアドバイスが可能です。コミュニケーションや対人関係が苦手な子どもを受け入れる心の持ち方や、子どもの学校生活や進路など、自分たちの経験談を事例のひとつとしてお話しすることもできますし、要望があれば学校に赴いて、先生や他の保護者の理解を得るためにお話しすることもできます。
一人で子どもの発達に悩んでいる人がいたら、一緒に繋がり合って、子どもたちのゆるやかな成長を保護者みんなで支え合いながら見守っていきたいです。
一人で子どもの発達に悩んでいる人がいたら、一緒に繋がり合って、子どもたちのゆるやかな成長を保護者みんなで支え合いながら見守っていきたいです。
支え合いながら見守る、子どものみらい
「子どものおかげで自分も成長できたよね」と笑いながら自分たちの苦労話を振り返るキャリアサポートクラブの保護者たち。子育てに苦労してきたからこそ、他の保護者には同じ苦労をしてほしくないという思いで、サポート活動を続けている。お互いのありのままを認め、優しく受け入れる活動には愛があふれていた。
団体プロフィール
一般社団法人 キャリアサポートクラブ
2014年8月に、北九州市で専門家と保護者が設立。円滑なコミュニケーションや対人関係が苦手な子どもの自立を目指した社会参加体験や、仲間意識醸成の支援に取り組んでいる。また保護者には定期的な茶話会やリラックス体操、子どもの発達の専門家との勉強会などを開催し、悩みやストレス軽減のためのサポートをしている。
発達障害のある子どもたちの支援の場はまだまだ少ない中、社会へ出ていくまでの長い時間をかけて継続される支援は、子どもにとっても親にとっても大きな支えとなる、素晴らしい活動だと思います。
悩みや不安だけでなく子どもの成長や喜びも分かち合える場はとても重要だと思います。専門の先生がいてくださり、その時々に話を聞いていただけることは、とても心強いです。
なかなか自分からは入っていけない孤立しがちなお母さんが減ってくれるとうれしいです。
孤立しがちな方をサポートすることは誰もが安心して暮らせる社会を実現する上でとても大切だと思います。これからもがんばってください。