子どもの居場所づくりや心のケア
熊本県玉名市にある「ブックカフェ・ルリユール」。約2,000冊の本が並ぶカフェ内には、子どもたちの笑い声と、手作り料理のおいしそうな香りがあふれている。ここで毎週木曜日の夜に行われているのは、子どもたちに学習支援と食事を提供する活動「まなびば・たまな」。この活動を運営する、「くまもとスローワーク・スクール」の代表、入江真之さんにお話を伺った。
「くまもとスローワーク・スクール」では、どのような活動をされていますか?
学習支援と食事提供による居場所づくり
「くまもとスローワーク・スクール」は、学校を自分の居場所だと感じられない子や、夜に家で一人きりになってしまう子どもたちを対象に、学習支援と食事提供をする活動「まなびば・たまな」を運営しています。活動は、毎週木曜日に玉名市内のカフェで実施。現在は小学校1年生から中学生まで、20人程度が登録しています。子どもたちは夕方5時頃から集まって、宿題をしたりスタッフと一緒に料理作りをして過ごしたあと、みんなで食事をしてから午後8時には帰宅。1回100円で参加できます。現在、支援スタッフは4人ですが、カフェの常連や地域の方、スクールソーシャルワーカー、大学生などが手伝ってくれることもあり、毎回賑やかな活動です。
「まなびば・たまな」を作ったきっかけを教えてください。
気軽に立ち寄れるカフェで、プロの支援を
私が、居場所のない子どもたちのために何かしてあげたいと考えるようになったのは、大学時代にフリースクール講師のアルバイトをしたときからです。大学卒業後は臨床心理士として勤務しましたが、自分の住んでいる地域は生活保護受給率が県内3位と高く、高校中退や不登校の背景には家庭の生活困窮が深く関わっていることを知り、「子どもたちを支援したい」という思いで、フリースクールを立ち上げることにしました。その活動の一つとして、冬休みの宿題の学習支援と温かい食事を提供したところ、子どもたちが喜んでくれただけでなく、家庭での様子も変わったという報告を受けたことをきっかけに、「まなびば・たまな」の活動を始めることにしたのです。
行政や学校にも相談窓口があり、経験豊富な支援者がいますが、相談に行くのには勇気がいるという声をよく聞きます。そこで、生活圏内にあるカフェなら、気軽に立ち寄って相談しやすいと考え、「ブックカフェ・ルリユール」にご協力いただき、カフェで活動を行うことにしました。 「ブックカフェ・ルリユール」の店主・相馬和美さんは、カフェを子どもの居場所として提供くださるだけでなく、「まなびば・たまな」の母親役として子どもたちを優しく包み込んでくれます。
行政や学校にも相談窓口があり、経験豊富な支援者がいますが、相談に行くのには勇気がいるという声をよく聞きます。そこで、生活圏内にあるカフェなら、気軽に立ち寄って相談しやすいと考え、「ブックカフェ・ルリユール」にご協力いただき、カフェで活動を行うことにしました。 「ブックカフェ・ルリユール」の店主・相馬和美さんは、カフェを子どもの居場所として提供くださるだけでなく、「まなびば・たまな」の母親役として子どもたちを優しく包み込んでくれます。
活動を始めてから、子どもたちに変化はありましたか?
子どもたち自身で励まし合える人間関係が生まれた
ある小学生の男の子は不登校気味でしたが、「まなびば・たまな」には毎週欠かさず来てくれていました。その子は、ここで他の小学校の子どもたちやスタッフなどの大人たちと、おしゃべりしたり食事をして過ごすうちに、だんだん社交的になっていきました。その後、彼は中学生になって不登校もなくなり、今は一生懸命部活に励んでいます。
ここで仲良くなった子どもたちは、活動日以外でも交流を深めています。例えば、男の子たちは釣りに行ったり、女の子たちはお菓子作りをするなど、なんだか楽しそうで微笑ましいです。ここには似たような境遇の子どもたちが多いので、自分を取り繕うことなく、いい人間関係が築けるのではないでしょうか。子どもたち同士で励まし合えるような関係性がいつの間にか生まれているのを感じます。
ここで仲良くなった子どもたちは、活動日以外でも交流を深めています。例えば、男の子たちは釣りに行ったり、女の子たちはお菓子作りをするなど、なんだか楽しそうで微笑ましいです。ここには似たような境遇の子どもたちが多いので、自分を取り繕うことなく、いい人間関係が築けるのではないでしょうか。子どもたち同士で励まし合えるような関係性がいつの間にか生まれているのを感じます。
子どもたちへの支援で心掛けていることは何ですか?
本当に支援が必要な子どもを見逃さないこと、 信用できる大人であり続けること
まずは、本当に支援が必要な子どもを見逃さないように心掛けています。「子ども食堂」など、食を通じた子どもへの支援は全国的に広がっていますが、社会的支援が本当に必要な子どもへサポートが行き届いているかという点は、多くの団体にとっての課題です。私たちは、養護教諭やスクールソーシャルワーカーなどの専門家から、支援が必要な子どもを紹介いただくようにしており、手を差し伸べるべき子どもを見逃さないようにしています。
もう一つは、子どもたちが信用できる大人であり続けるように心掛けています。時々、男の子たちが、ここで取っ組み合いの喧嘩をすることがありますが、そんなときは、父親代わりになって叱っています。日頃から一緒の時間を過ごし、信頼関係があるからこそ、思いきり叱ることができるのです。「自分を受け止めてくれる信頼できる大人がいる」と思えることは、彼らが今後生きていく上で大きな力になるはずです。彼らが周りの大人への信頼を失うことなく、中学・高校を卒業してもこの地域で自立して生きていけるように、行政や他のNPOと連携しながら、居場所づくりを続けていきたいと考えています。
もう一つは、子どもたちが信用できる大人であり続けるように心掛けています。時々、男の子たちが、ここで取っ組み合いの喧嘩をすることがありますが、そんなときは、父親代わりになって叱っています。日頃から一緒の時間を過ごし、信頼関係があるからこそ、思いきり叱ることができるのです。「自分を受け止めてくれる信頼できる大人がいる」と思えることは、彼らが今後生きていく上で大きな力になるはずです。彼らが周りの大人への信頼を失うことなく、中学・高校を卒業してもこの地域で自立して生きていけるように、行政や他のNPOと連携しながら、居場所づくりを続けていきたいと考えています。
今後、どういう活動をしていきたいですか?
教育・福祉の両面から、きめ細やかな児童支援を
今後は、子どもだけでなく、保護者も含め、家族ぐるみでサポートできる体制を整えたいです。親同士の横のつながりができて、気軽に色々なことを相談できる仲間が増えれば、保護者たちにとっても良い居場所になると思います。
さらに、玉名市の生活保護などを担当している「暮らしサポート課」との連携を深めて、行政では手の届かない児童支援を、教育・福祉の両面から補完したいと考えています。
さらに、玉名市の生活保護などを担当している「暮らしサポート課」との連携を深めて、行政では手の届かない児童支援を、教育・福祉の両面から補完したいと考えています。
信頼関係が生む、みらいへ向かう“心の栄養”
2016年4月に襲った熊本地震。その夜をたった一人で過ごした子は、「まなびば・たまな」で、怖かった体験を必死に語り続けたという。「つらいことや悲しいことを話せる場があったり、たとえ話さなくても自分を受け入れてくれる場所がある。それだけで、子どもたちは救われます」と語る入江さん。「まなびば・たまな」のスタッフの優しさと温かいご飯のおいしさは、子どもたちの大切な思い出になり、それがやがて“心の栄養”になるはずだ。子どもたちが集うカフェは、今日も賑やかに、笑顔で満たされている。
団体プロフィール
くまもとスローワーク・スクール
2014年、社会的ひきこもりや不登校の方への就労支援および教育支援などでフリースクールを開講。2016年3月より、生活困窮世帯の子どもや若者のための学習と食事支援活動「まなびば・たまな」を始める。地元小中学校と連携し、ソーシャルワークを重視した社会的居場所づくり事業で、子どもたちに学校や家庭以外の心のよりどころを提供している。
心の栄養って、私の心に響くスローガンでした。益々の発展をお祈りいたします。
子どもの育ちにくさを近頃痛感しています!地域に密着したこういう団体を応援したいです!
子どもの居場所づくり、大人との信頼関係の構築の場が地域にたくさんあることを願っています。頑張ってください!
子どもたちが力をのばすのみならず、その過程で人と社会に信頼がもてる地域づくりを期待します。