NPO法人心音

学習塾をきっかけに、子どもたちが感じる身近なみらい

  • 少年

    私は過去にスタッフとして参加しました。沖永良部との出会いは私の人生を大きく変え、繋がりを大切にすることを学びました。1年ぶりに子供たちと再会し、私のことを覚えてくれている子供たちが多くいました。これから先もずっとこの活動が続いていくことを応援するとともに、これから先もサポートしていきます。

  • 私は大学時代に学習塾をボランティアでしていました。塾に通えなかったり、目標の学校に行けないと悩んでいたり、友人や親子関係でも悩む子供たち。子供たちの悩みを少しでも聞いてあげれる場をもっと作ってあげてほしいです。

    成人女性
  • 中年男性

    未来を担う子どもの貧困は大きな問題です。特に学習塾がない島で、それもシングルマザーにとっては深刻な問題。この支援活動は大いに意義ある活動ですので、頑張ってください!

  • 沖永良部での取組みを初めて知りました。子ども食堂との連携など魅力を感じました。これをきっかけに夏・冬帰省のタイミングでボランティアできたら嬉しいです。がんばってください。

    少女
子どもの貧困対策
冬休みの5日間、ひとり親や共働き世帯の子どもたちを対象とした無料の学習塾が、鹿児島県の沖永良部島で開かれた。
島料理のランチ付きで、先生は大学生という“ひと味違う”学習塾を開講した経緯やその想いについて、主催者であるNPO法人心音の理事長の安徳建二さんに伺った。
「冬休み学習塾」を実施することに経緯は何ですか?

ひとり親世帯や、共働き世帯の増加を背景に

ここ数年、全国的にも離婚件数が増えているようですが、沖永良部島でも、島を出て結婚した女性が離婚してシングルマザーといて島に戻ってくるケースが増えています。この地域ではシングルマザーだとパートでしか働けないことも多いことや、島に残っている同年代の男性とはなかなか再婚に至らないという女性もいます。結果、子どもたちが学校から帰っても、暗い家にひとりというケースを多く見聞きするようになりました。
 
そこで、子どもたちが家に帰って、まずは教科書を開く習慣を身につけてもらえたらと思い、塾を開くことを決めました。この学習塾は、2014年に1度実施したことがありましたが、前回は、午前中に勉強をして昼は親御さんに迎えに来てもらい、また午後に来所して勉強というスタイルであったため、働く女性には利用しにくいものでした。
その時に、昼に親御さんが迎えに来れず、ひとり会場の隅でパンをかじる子もいて、次回は是非ともランチつきの学習塾を開きたいと考えていました。
 

沖永良部での子育て環境や、子どもたちの教育環境はどうなっているのでしょうか?

本格的な学習塾がなく、学習に困難を抱える子へのケアも足りない

沖永良部島は知名町、和泊町とふたつの町があり、人口は1万3,000人ほどの小さい島。全国にあるような本格的な学習塾もないのが現状です。今回の学習塾は定員20名を予定していたものの募集告知を行うと希望者が多く、最終的には33名の子どもたちが参加しました。
また、最近では発達障がいを抱える子どもたちも目立つようになっていますが、その子たちが放課後を安全に過ごせる場所もありませんでした。私たちはこの9月に指定多機能型事業所「サランセンター」をオープンし、発達障がいや不登校の子どもとそのご家族を支援する事業もスタートさせました。

冬休み学習塾の手ごたえはどうでしょうか?

大学生や地域のボランティア、多くの方に支えられている

今回の学習塾は“ランチ付き”ということが大きな特徴です。最近は「こども食堂」が注目を集めていますが、ここでは島の食材を使った島料理を提供したいと考えています。郷土料理を使った食育にもなりますし、一人親世帯や共働き世帯の負担も軽減できると思います。
食事を提供することになった際、誰に調理してもらうかという課題もありましたが、知名町、和泊町問わず、「ぜひ私が」とお店を経験された方などがボランティアで来てくださったので、本当に助かりました。

そして、先生役を引き受けてくれた大学生にも感謝しています。特に前回もボランティアに来て指導してくれた鹿児島大学4年の地下(じげ)智隆くんが来てくれたことは嬉しかったです。前回参加した子どもたちも彼を覚えていて、とても和気あいあいとした雰囲気になりました。

今後の活動の目標などを教えてください。

この学習塾を毎年、夏にも冬にも開講していきたい

目標は、この学習塾を毎年続けていくことです。次回はぜひ夏休みにもと考えていますが、大学生は教員採用試験などもあり忙しい時期。今回までは鹿児島大学の教育学部の学生にお願いしましたが、教育学部以外の学生、あるいは鹿児島県内外の大学、学習塾のスタッフなど幅広くボランティア募集をしてもいいのではという提案もあり、その辺りはもっと検討していきたいです。

今回好評だったランチは、次回以降もぜひ継続したいです。ひとつ心配なのは、たくさん食べてくれるのは嬉しいけれど、食後はどうしても子どもたちが眠くなってしまうこと。気持ちのスイッチを入れ替えるという意味でも、食後は軽いゲームやレクリエーションを取り入れるなどの工夫が必要だと感じています。

今後の目標に向けての課題などはありますか?

スタッフと資金の確保をし、ボランティアだけに頼らない運営を

一番の課題は、やはり運営資金。地域の子どもたちには、この学習塾には無料で参加してもらいたいので、ボランティアの交通費や食費などをどう確保していくかが課題でしょう。

また、私たち「心音」のスタッフだけでは円滑な運営は難しく、先生や調理担当者はボランティアに頼るしかありません。そこで、今回のように先生役の学生や調理を担当してくださった方に引き続きサポートしていただくことはもちろん、地域の方、例えば現役はリタイアしたけれど何かしたいという教員の方などにも指導者として積極的に参加していただければと思っています。

いろいろな環境で暮らす子どもたちに加え、発達障がいのある子どもたちも参加していますので、幅広い子どもたちに対応できるよう、受け入れ側の体制ももっと充実させていきたいです。

 
 
 
 

学習塾をきっかけに、子どもたちが感じる身近なみらい

沖永良部島には高校までしかなく、卒業後は大学進学や就職で島外へ出るのがほとんど。子どもたちは大学生の年代のお兄ちゃんとは接する機会がないこともあってか、学習中の静けさとは打って変わって、休憩時間には学生を取り囲んで大騒ぎ。家庭学習に取り組むきっかけづくりが目的だった学習塾は、ロールモデルとして大学生と接するという貴重な側面も持つ。
「ここに通っていた子がボランティアで先生をしてくれるようになったら嬉しいですね」と語る安徳理事長の言葉は、子どもたちのキラキラした瞳を見ていたら、近い将来に実現するのではと思わせた。
団体プロフィール

NPO法人 心音

2006年4月に設立。沖永良部島全域を対象に地域活性化や福祉の増進を目的に、無料の学習塾のほか、定住・移住促進や就労支援、障害児通所支援、障害者福祉サービスなど、幅広い活動を展開している。
また2016年には発達障がいや不登校の子どもたちを支援する指定多機能型事業所「サランセンター」を開設。このほか毎月1回、高齢者がカフェに集う「オレンジカフェ事業」なども実施している。

活動報告一覧へ戻る