NPO法人 抱樸

学習支援をきっかけに、親子のみらいを救いたい

  • 中年女性

    生活困窮世帯の子どもたちは、年中行事や日常生活などにおいて、さまざまな経験が不足しています。大人の事情で我慢を強いられる子供たち、生きることで精一杯の子供たちを思うと身がつまされます。未来ある日本を支える子供たちに多くのチャンスを与えてあげてください!

  • 生き易い社会は、きっと子どもが生き易い社会だと思います。誰もが生き易くなるための支援を、これからも頑張ってください。

    成人男性
  • 成人女性

    親の経済力が子供の学力に大きく影響するといわれる昨今、抱樸のような場所は子供たちにとってとても有意義な場所になるのだと思います。子供が学ぶ楽しさを知り、社会で生きて行く術を学べる場所として、これからも頑張ってください。

  • 貧困や家庭環境により、子どもの教育や成長に大きな格差が生まれています。子どもを育てる親として他人事ではありません。未来を担う子どもたちの為に、また家族全員に力を注いで下さっている抱樸を、いつも応援しています。

    中年女性
子どもの貧困対策
近年、「子ども食堂」などの取り組みが注目され、子どもの貧困問題への関心が高まっている。子どもの貧困は、子どものいる世帯の貧困問題。子どもたちに学ぶ場と居場所を用意する一方で、その家族の相談相手となって、家族をまるごと支援しているのがNPO法人 抱樸(ほうぼく)。
中間市での学習支援活動を担当されている中間あやみさんにお話を伺いました。
NPO法人 抱樸では、どのような活動をされていますか?

ホームレスを生まない社会をつくるために

「抱樸」は、北九州市のホームレス支援を目的として設立された団体です。「ひとりの路上死も出さない」「ひとりでも多く、一日でも早く、路上からの脱出を」「ホームレスを生まない社会を創造する」。この3つを使命として、多くの登録ボランティアに支えられながら支援を行ってきました。
 
私たちがサポートしてきたことで、路上生活から自立を遂げた人は、今では2800名ほどにもなりました。現在では路上だけでなく、就労訓練事業、更生保護、子どもの学習支援など、活動範囲は大きく広がりつつあります。中間市での支援活動は、2015年から始まりました。親から続く貧困の連鎖を断ち切り、新たなホームレスを生まないための活動です。
なぜこの仕事に関わるようになったのですか?

厳しい現実から目をそらさずに、人のために働きたい

ソーシャルワーカーを目指して大学で福祉を学んでいたとき、障がいを持つお子さんと精神疾患の妻を抱え、生活に困窮した外国人男性に出会いました。大学で学んだ成果を活かして彼らを救おうとしたのですが、結果はまるでダメ。手も足も出ませんでした。
 
その後大学院へと進みホームレス支援に携わるうちに、物理的困窮だけでなく社会的に孤立した人たちが大勢いることを知って、一層この問題から目をそらすことができなくなりました。ボランティアではなく仕事としてこの問題に取り組みたいと考えていたとき、ホームレス問題を正面から受け止めて支援を行う「抱樸」の存在を知り、ここで働くことになりました。

なぜ、子どもの学習支援を行うようになったのですか?

子どもの学習支援を入り口に、家族をまるごと支える

ホームレス問題を解消するためには、貧困のスパイラルを断ち切ることが大切です。実は生活保護世帯の4分の1が、その親も生活保護を受けていたという結果が出ています。親の貧困が原因で、子どもの学びの環境が整わず、子どもが中卒や高校中退になってしまうことも多い傾向にあります。

しかし、ホームレスの支援と違って、“家”がある困窮世帯へのアプローチは、表面的に分かりにくいことや、個人情報保護等の関係もあり、難しい課題がありました。そこで、子どもの学習・居場所支援をきっかけに、子どもだけでなく家族にアプローチをしていくようにしました。

家族みんなの相談相手となって、家族全体の問題に向き合い、その家族一人ひとりが困窮したり、孤立状態になったりしないよう支援するのが目的です。子どもが幸せになるためには、家族みんなが幸せになることが必要ですからね。

活動の手応えを感じるのはどんな時ですか?

子どもからのメールに 思わず嬉し泣き

毎週2回、中間市の施設にある広い和室に、さまざまな家庭環境の子どもたちがやってきます。自由に学習していますが、先生役の学生や社会人ボランティアに質問したりして、ちょっとした塾のような雰囲気。休憩時間には職員が手作りした軽食を食べながら、にぎやかにおしゃべりします。手作りというのが大切で、「あなたは野菜が嫌いだから玉子サンドにしたのよ」なんて話しかけながら一緒に食べていると、不登校だった子が「進学したい」とそっと職員に打ち明けるようになったりするんです。
 
去年はそんな風に当法人がサポートしてきた子が一念発起して高校に合格し、中学校の卒業式にそれまでサポートしてきたスタッフも同行し、ビデオを撮ってあげました。卒業式の夜、その子からこんなメールをもらいました。「今日はビデオを撮ってくれてありがとう。先生のおかげで大人が信じられるようになりました。これからもよろしくお願いします!」と。私が直接関わってきたわけではありませんでしたが、スタッフ間で情報共有しながら対応してきたこともあって、嬉しくて、嬉しくて、何度も読み返して泣いてしまいました。
今後、中間市でどのような活動を継続していきたいですか?

子どもの頃の経験の差が、大人になる時に大きな差に

生活困窮世帯の子どもたちは、年中行事や日常生活などにおいて、さまざまな経験が不足しています。子どもの頃の経験の“小さな差”が大人になって“大きな差”となって、出てきてしまいます。例えば、学校行事に参加しない親に育てられた子は、自分が親になった時に、親が学校行事に参加することが大きな意味を持つことに気づけないこともあるでしょう。
そこで、昨年12月には絵手紙の先生を招いて、年賀状づくりに挑戦したり、3月には陶芸体験を開催したりしました。こういった事になじみが薄い子どもたちには貴重な体験だったようで、とても喜んでいました。普通の家庭では“当たり前のこと”を、きちんと体験させてあげたいです。

今、当法人が行っている支援も、子どもたちが親になった時に、本当の成果が見えてくるのかもしれません。それでも近い将来、小さな取り組みの一つひとつが貧困の連鎖を断ち切るに違いないと信じています。人口5万人にも満たない中間市での取組みが、地方都市における自立支援の新しいモデルケースになればいいと思っています。

 
 
 
 

学習支援をきっかけに、親子のみらいを救いたい

「今日のサンドイッチにはハンバーグが入っているよ!」「余ったから持って帰っていいよ!」夕方の自習室に、子どもたちとボランティアスタッフの明るい声が飛び交う。その中には、かつて集団生活が苦手だった子も、人前でマスクが外せなかった子もいる。
学習支援と居場所づくりの活動を通じて、少しずつ社会との距離を測りながら、みらいへと歩みを進める子どもたち。そして、それをきっかけに届けられる家族まるごと支援。
この子たちが親になったとき、貧困のスパイラルが断ち切られていることを信じて、抱樸は今日もどこかで、親子のみらいを支えている。
団体プロフィール

NPO法人 抱樸

1988年、野宿労働者の調査で手作りのおにぎりをホームレスの人々に手渡したのが活動の始まり。有志による炊き出しが始まり、「北九州越冬実行委員会」として事務局体制を整備、次第にパトロールの範囲や参加者が増加。2000年にNPO法人として認証を受け、団体名を「北九州ホームレス支援機構」に改名。
その後、活動25周年を機に、2014年に「抱樸」に改め、新たなホームレスを生まないため、さまざまな包摂的支援を、北九州市、下関市、福岡市、中間市を中心に行う。
「抱樸」とは「樸(製材される前の原木)のままを抱く」の意で、ありのままの姿を受け止めた上で、共に生きていくことを意味している。

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