高千穂町吹奏楽連合会

子どもたちのみらいのために忘れられない音楽との出会いを

  • 中年女性

    活動に参加することを通じて孫が成長する姿を見て、頼もしく感じた。末永く活動を続けて欲しい。

  • 音楽は楽しく、一緒に参加した人同士が一体感を味わえる活動です。がんばってください。

    少年
  • 成人女性

    吹奏楽文化の定着に向けた活動を通じて郷土愛を育むことができる素晴らしい取組み。高校生時代に音楽に触れることは子どもたちのみらいにきっと良い影響をもたらしてくれると思う。

  • 音楽は理屈抜きにすばらしいもの。長く音楽に関わってきた者として、吹奏楽を通じた子どもたちのみらい作りを応援します。

    中年男性
演劇や音楽等を通じた次世代育成
九州山地の中央にある人口約13,000人の小さな山里、宮崎県高千穂町。
小中高校の吹奏楽部の生徒たちに、プロによる演奏指導や演奏会の機会を与え、この地に吹奏楽文化を根付かせようとしているのが「高千穂町吹奏楽連合会」。熊本地震発生後は、毎月1回のペースで被災地を訪れ、仮設住宅で暮らす住民への演奏活動や、熊本県内の小中高校吹奏楽部との合同演奏会を開催することで、被災地の支援にも取り組んでいる。
同会の取り組みについて会長の田端歩さんに話を伺った。
高千穂町吹奏楽連合会ではどのような活動をされていますか?

小さな山里で音楽の楽しさを子どもたちに

「高千穂町吹奏楽連合会」の会長を務める田端歩さん

「高千穂町吹奏楽連合会」の会長を務める田端歩さん

高千穂町吹奏楽連合会は、2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに「音楽を通して、何かできることはないだろうか」という思いを持つ高千穂町の有志が中心となって立ち上げました。高千穂鉄道の廃線跡地で、チャリティーコンサートを開催するなど、活動を進めていくうちに、「地元の子どもたちにも音楽の和を広げたいね」という話が持ち上がり、小中高生を巻き込んだ活動を始めました。熊本地震発生後は、毎月1回のペースで被災地を訪ね、熊本の中高生と一緒に演奏活動をしています。
今回は、日本三大吹奏楽団の一つである「シエナ・ウインド・オーケストラ」からトロンボーン奏者である郡恭一郎さんをお招きして、高千穂高校吹奏楽部の学生13人に演奏指導をしていただきました。翌日には熊本の中高生や熊本市民吹奏楽団ら約90人の方々と合同演奏会を開催し、子どもたちにとって貴重な体験になりました。

この活動に関わるようになったきっかけを教えて下さい。

小学校の時に、音楽を通じて触れた“世界”その感動を子どもたちに伝えたい

私自身が高千穂町の出身で、小学校の頃に部活で吹奏楽をしていました。小さな田舎の小学校なので、初めて“世界”を感じたのが吹奏楽で出合った音楽だったんです。しかし、当時、中学・高校には吹奏楽部がなかったので、それ以来吹奏楽とは遠ざかっていました。吹奏楽に取り組んだ3年間の思い出が原動力となり、この感動を高千穂の子どもたちにも伝えたいと思い、子どもたちを支援する活動を始めました。現在、それぞれ仕事を持つ会員15人が、休日に活動しています。

これまで活動を続けてきてどのような手応えを感じますか?

生の音楽に触れることが難しい環境で、できることを模索

高千穂町は、県庁所在地である宮崎市から北西へ約120km離れた場所にあり、宮崎市へは直通の交通機関もなく、車で片道3時間以上かかります。高齢化率も高い典型的な中山間地域です。この地に一流のオーケストラを呼ぶことは不可能ですし、コンサートを聴きに行くとなると、日帰りでは難しいのが現状です。
このような環境ですから「音楽鑑賞が趣味」という人がいないんですね。そんなこの町で、気軽に音楽会が開催されるようになれば、音楽文化も徐々に根付いてくると思っています。最近は、お祭りの時や老健施設などから声がかかるようになり、地域とのつながりが深まってきていると実感しています。

一流の音楽家の指導は、子どもたちにとって?

郷土出身の音楽家のアドバイスに熱心に聞き入る子どもたち

子どもたちが上達するには、一流の音を直接耳にすることが一番です。今回、「シエナ・ウインド・オーケストラ」の郡さんから直接演奏指導を受ける貴重な機会を得ましたが、子どもたちは郡さんのトロンボーンの音色の美しさに感激したようです。「本物の音色ってこんな音だよ」と、どんなに言葉で説明しても、わかるものではありません。実際にその音を聞き、五感で感じ、感性を磨くような体験は、きっと子どもたちの大きな財産になると思います。
またタンギングの方法や、演奏の強弱の付け方など、郡さんのわかりやすい説明を聞いて、子どもたちだけでなく、私たちも “なるほど!”と勉強になりました。
郡さんは、宮崎県のご出身です。郷土出身のプロの音楽家に直接指導していただいたことは、子どもたちの誇りや励みにつながると思います。

音楽が被災地にもたらすものは?

演奏する人も、聴いている人もみんなが笑顔になれる

今回の演奏指導の場は、阿蘇郡西原村の仮設住宅内にある集会所「みんなの家」。子どもたちが演奏をしていると、音色につられたおばあちゃんたちが仮設住宅の中から出てこられ、演奏を笑顔で聴いてくれました。子どもたちの演奏で、少しでも熊本の皆さんが笑顔になってくださればうれしいですね。  
また、たくさんの方々が今も仮設住宅で暮らしていらっしゃるという現実を、高千穂の子どもたちに知って欲しいという思いもありました。
翌日はイオンモール熊本で2時間程度の合同演奏会を開催。近隣の嘉島中学校や御船高校、平成音楽大学の学生を始め、熊本市民吹奏楽団など、熊本から多くの方々に参加いただきました。音を通じて新たなつながりを持つことができたことは、高千穂の子どもたちにとって貴重な経験です。
会場テントは、演奏する学生達や、演奏会を聴きに来た被災地の方々の笑顔で溢れていました。音楽の力ってやっぱりすごいです。これからも被災地に向けて音による笑顔を届けていきたいと強く思いました。

 
 
 

 

子どもたちのみらいのために忘れられない音楽との出会いを

「レガードのタンギングは、ジャイアント馬場がしゃべるみたいに“ラ”というと、きれいな音が出るよ」。トロンボーン奏者の郡さんのワクワクする指導に、目を輝かせて聞き入る子どもたち。最初はぎこちなかった演奏が、回を重ねるごとに、一つの音楽としてまとまっていくプロセスを目の当たりにし、感動を覚えた。
高校を卒業すると、子どもたちのほとんどは進学などで高千穂町から出て行くという。「吹奏楽の文化が地元に定着しないのが、悩みの一つ」と語る田端会長。
それでも「“あのときのあの演奏、一生忘れないね”」といった音楽との出会いを一度でも与えてあげることができれば、子どもたちのみらいのために活動をやっている意味はある」とほほ笑んだ。
団体プロフィール

高千穂町吹奏楽連合会

東日本大震災の復興チャリティーイベント実施を機に2011年に結成。高千穂町を含む宮崎県西臼杵郡の小中高校の吹奏楽部を集結し、年1回、合同演奏会を実施。各学校の部活動にも出向き、楽器指導に当たるなど地域の芸術文化の創生に寄与する。
2016年4月の熊本地震以降は、月に1回のペースで熊本を訪れ、仮設住宅などで暮らす住民への演奏活動や、熊本県内の小中高校吹奏楽部との合同演奏会を企画・実施することで、熊本の被災地の支援にも力を注いでいる。

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