きんしゃいきゃんぱす

当然のようにそこにある、地域のタカラモノをみらいへ

  • 成人女性

    子どもが学校以外で安心して学んだり遊んだりできる場所は少ないと思います。そんな中、きんしゃいきゃんぱすのような場所は子供にとって、とても有意義な場所だと思います。未来ある子どもたちのために、これからも頑張ってください。

  • 九大が移転してからも、形は変わっても、子どもも大人もみんなが居つける場でありますように。

    成人男性
  • 中年女性

    ずっと続けてほしいです。息子が大好きな居場所なので。

  • 地域に根ざすまで、大変な努力があったのだと思います。これからも子どもたちの居場所を守れるよう、活動を応援しています。

    成人女性
  • 成人男性

    きんしゃいきゃんぱすは地域において様々な役割を担っている場だと思っています。その地域に暮らす多種多様な人々が、知り合い、情報を共有し、感情を共感する事で双方向の相互関係を築いているからです。きんしゃいきゃんぱすをモデルとして、このような場が、もっと多くの地域に生まれたらいいなと思います。

子どもの居場所づくりや心のケア
福岡市東区の箱崎商店街の一角で、日常の中に溶け込んだ子どもの遊び場は、放課後の子どもたちでとても賑やか。
子どもたちから「やましーたけ」の愛称で親しまれている代表の山下智也さんに、活動のきっかけやこの場所に対する思いについてお話を伺いました。
どんなきっかけで、商店街にこのような場所を作られたんですか?

空き店舗に大学の研究室を設けたら、いつのまにか子どもの遊び場に

子どもたちと遊ぶ“やましーたけ”山下智也さん(左奥)

子どもたちと遊ぶ“やましーたけ”山下智也さん(左奥)

元々は箱崎商店街の空き店舗の有効活用の一つとして、大学の研究室(分室)を作ったのがきっかけでした。夏にカキ氷屋を始めたところ、立ち寄る子どもたちがどんどん増えていって、いつのまにか占領されていました。学校や公園といった子どもたちの動線上にある、ここは遊び場として、ちょうど良かったんでしょうね。

今も昔も、子どもたちが主体になってやりたいことをやっていい場、という雰囲気を大事にしています。友達との待ち合わせ場所にして近くの公園に遊びにいったり、スタッフとおしゃべりしたり、置いてあるマンガを読んだり……と、子どもたちの遊び方はいろいろ。放課後に2時間くらい開けていますが、入れ替わり立ち替わりで毎日20~30人くらいが遊びに来ます。

最近では、小学校を卒業した中高生が立ち寄ることも増え、子どもの年代の幅も広がってきました。
 

きんしゃいきゃんぱすを運営する上で、気をつけていることはありますか?

子どもたちも、スタッフも、主体性を大切に

きんしゃいきゃんぱすでは、主体性・関係性・日常性の3つを大切にしています。
まず、主体性ですが、子どもたちはもちろんのこと、スタッフも主体性を大切にしています。自分が来たい時、来れる時に。やりたい事をやりたい人と。これが、この場のゆったりした良い雰囲気を作っていると思います。団体としても、「こうしたい!」という具体的な目標は敢えて設けないようにしています。

2つ目の関係性は、子どもたちもスタッフも、家族や地域の人、学生、社会人といった、立場の異なる人と直接コミュニケーションをとり、関係を築いていくこと。そういうコミュニケーションを楽しく、気軽に続けていくことで、子どもたちやスタッフ、地域の方々と、良い関係を築いてくることができました。

3つ目の日常性とは、このきんしゃいきゃんぱすを毎日開け続けること。特別なイベントではなく、子どもたちの日常に、当たり前に存在し続けることが特に大切です。学校や家でトラブルがあったとしても、いつでも立ち寄れる場所、話を聞いてくれるお兄さんやお姉さんが近くにいるということで、子どもたちに安らぎを与えることができていると思います。

12年間続けてこられて、大変だったことはありますか?

安定してここを開け続けること、運営資金の確保も悩みの種

一番大変に感じているのは、この場を安定して開け続けることです。自分たちが大学生だった頃は、大学帰りに毎日開ければ良かったのですが、私は今は宮崎で働いているため、来れたとしても週1回程度。学生だった他のスタッフも社会人になっていきますので、スタッフが時間を確保するのが難しくなっています。
 
それと、商店街の賃料や光熱費は、決して安くはありません。そのサポートを得るために、いろいろな助成金に申請を出したり、イベントの開催を予算を捻出していただける子ども会育成連合会と共催にしたり、ワークショップでカンパを募ったり。何とか工夫しながら資金繰りしてきました。

きんしゃいきゃんぱすの活動をしていて、どんなことが嬉しかったですか?

子どもたちにとって、地域の宝に

本来、子どもたちは自ら遊ぶ力を持っています。しかし、社会環境の変化や遊ぶ玩具の変化によって、そういう力が衰えている子もいます。「何して遊べばいいとー?」最初はスタッフにそうやって遊んでもらっていた子が、自分たちでルールを作って自発的に遊べるようになってきたのは嬉しいですね。当初は言動がやや乱暴だった子が、ここに遊びに通っているうちに、心のつっかえが取れたように表情が柔らかくなったことも嬉しかったです。
 
また、学校で“地域の宝を見つける”という課題が出た時に、きんしゃいきゃんぱすを取り上げてくれてくれた子がいたりして、子どもたちにとって大切な場所になっていることを実感できたこともありました。そして、感慨深いのは、後継者やサポーターが育ってくれていること。現在中心となっているスタッフのうち、半分くらいは元々きんしゃいきゃんぱすに遊びに来ていた子どもたち。この場のことをよく理解し、「活動を支えたい」と行動してくれているのを目の当たりにすると、ここでの活動が循環サイクルに入っていることを強く感じています。

山下さんやスタッフの方にとって、きんしゃいきゃんぱすとはどういう存在ですか?

ライフワークであり、大切なみんなの居場所

きんしゃいきゃんぱすは私を含め、スタッフにとっても自分の居場所です。もはや、ボランティア活動という認識は全くありません。
 
子どもの頃から遊びに来ていたスタッフ、猪股さんは「自分にとって、子どもの頃から遊んでいた安心できる居場所。子どもの時の遊び場がなくなるのは寂しいし、子どもたちのためにも守っていきたい」と、今はスクールカウンセラーを目指して大学で勉強中。また、10年以上長く携わり、現在はほぼ毎日ここを開けている鬼塚さんは、「近所の1歳だった子が小学生になったり、子どもの成長を見ることができるのは長く続けてきたおかげ。忙しくなっても行ける日には駆けつけたい」と、臨床心理士として勤めながら毎日足を運んでくれています。
 
このように、日常生活の一部として大切にしてくれているスタッフが多くいることが、きんしゃいきゃんぱすの特長。私自身も住んでいるのは宮崎県ですが、出来るだけ月に3~4回は顔を出すようにしていますし、今後も、活動の拠点はここ「きんしゃいきゃんぱす」だと考えています。

 
 
 
 

当然のようにそこにある、地域のタカラモノをみらいへ

地域の子ども会育成連合会と共催する「九大探検イベント」に来てみると、約200人の子どもたちがダンボールで秘密基地を作ったり、滑り台を作って遊んだり、ロープで木登りしたりと、いろんな遊びをしていた。
「スタッフと学校のこととか、楽しかったこととかを話すのが楽しい!」と週に3~4日も通っている女の子や、あるお母さんは「いつもと違う友達と遊んだり、年齢が離れたお姉さんと話したり、とても楽しんでいました。九大が移転しても続けてほしい。」と、箱崎で暮らす子どもたちや保護者にとっても、日常に溶け込んだ、なくてはならない存在。
商店街に佇む“地域のタカラモノ”は、いつもと同じように、今日もみらいに向かって輝いている。
団体プロフィール

きんしゃいきゃんぱす

2004年から福岡市東区の箱崎商店街の空き店舗を活用し、子どもの遊び場「きんしゃいきゃんぱす」を九州大学や福岡大学などの大学生・OB・OGが中心となって運営。平日の放課後はほぼ毎日開放し、子どもの「やってみたい」という気持ちを大切に、子どもが主体となって自由に遊んでいる。
地元の子どもたちには、気軽に話せるお兄ちゃんやお姉ちゃんがいて、自由に遊べて、安心できる場所として定着。毎日20人前後の子どもが立ち寄る。現在では、当時の小中学生が大学生スタッフとしても活躍中。商店街には、子どもたちやスタッフの楽しそうな声が響き、賑わいが生まれている。年に数回、地域の子ども会とイベントを共催するなど、地域からの期待や信頼も厚い。

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