九州ブラインドサッカー協会

ブラインドサッカーを通じて、広がる子どもたちのみらい

  • 成人男性

    社会福祉士を志している大学生です。足の不自由な方でもスポーツを楽しめる世の中になってほしいです!応援しています!

  • 私は若い頃に首の骨を折り、車いすで生活をしています。障がいのある方の気持ちはすごくわかります。

    中年男性
  • 中年女性

    「誰でも楽しむ方法があり、目指すものを見つけることができる」ということを示してくださっていると感じました。皆さんの活動を応援いたします。

  • 障がいのある人に関わる仕事をしています。障がいを理解して、障がいを持つ人と健常者が、壁を越えて活動できたらいいなと思いました。応援したいです。

    成人女性
ハンディキャップを抱える子どもの支援
人間は、情報の約8割を視覚から得ていると言われているが、その8割の情報をシャットアウトした状態で行うサッカーが「ブラインドサッカー」だ。このブラインドサッカーを、視覚に障害を持った子どもたちに教える「九州ブラインドサッカー協会」の理事、堀田幸作さんに、目指すところや子どもたちへの思いなどを伺った。
ブラインドサッカーとはどんなスポーツですか?

“何も見えない状態”でプレーするサッカー

「九州ブラインドサッカー協会」の理事を務める堀田幸作さん

「九州ブラインドサッカー協会」の理事を務める堀田幸作さん

ブラインドサッカーとは「視覚に障害のある人のために考案されたサッカー」のこと。チームは5人制で、選手のうちキーパーだけは目が見える人が務めますが、それ以外の4人の選手は、アイマスクを付けて全く何も見えない状態です。
中に鈴が入った特別なボールを使い、選手は音でボールの位置や距離、スピードなどを判断します。また、選手同士が衝突しないように、相手のボールを取りに行く時には、「ボイ!」(スペイン語で「行く」という意味)と声を掛けるルールがあります。
日本国内には現在ブラインドサッカーチームが20弱あり、大会も開催されています。九州には福岡に一つだけ「ラッキーストライカーズ福岡」というチームがあります。

ブラインドサッカーの普及に取り組んだきっかけは何ですか?

子どもたちに「体を動かす楽しさ」を知ってほしい

九州でのブラインドサッカーは、現代表の渡辺修が、視覚特別支援学校の先生から「視覚に障害を持つ子どもは、スポーツに接する機会が少ない」と聞き、福岡のJリーグチーム「アビスパ福岡」の下田功部長(当時)とともに2002年に「九州ブラインドサッカー協会」を立ち上げたのが始まりです。その後、「ラッキーストライカーズ福岡」を設立し、選手の育成やチーム支援を続けてきました。この継続的な取り組みが認められて、2015年に福岡県の障害者スポーツ活性化事業を受託しました。
私はこの事業で、福岡県内の視覚特別支援学校の子どもたちにブラインドサッカーを教える際のサポート役として携わることになりました。私自身は長く小学生サッカーの指導をしていましたが、ブラインドサッカーのことを知ったのはこの時が初めてでした。
現在の視覚特別支援学校での指導は、放課後の1時間程度。小学1年生から中学3年生までの子どもが集まって、走ったり、ブラインドサッカーのボールを使った遊びをしています。子どもたちはあまりスポーツの経験がないため、本格的な技術指導ではなく、まずはスポーツや体を動かす楽しさを体験する場にしています。

ブラインドサッカーを通じて、子どもたちに何か変化はありましたか?

コミュニケーションが増え、思いやりの気持ちも育ってきた

ブラインドサッカーは、互いに声を掛け合うことでプレーを進めます。お互いの位置を声で知らせたり、弱視の子が他の子に教えてあげたりと、助け合う場面が多いのです。そのためか、プレー中だけでなく、普段からの声かけや会話も増えたように感じます。
また、九州ブラインドサッカー協会では、視覚に障害を持つ子どもへの指導だけでなく、健常者の子ども向けのブラインドサッカー体験会も開催しています。アイマスクをつけて体験会に参加した子どもたちからは「何も見えないので動くのはとても怖い」、「声掛けのサポートがあると安心する」という感想がありました。また「視覚に障害を持つ子どもの気持ちがわかった」と言う子もいました。

活動を通じて子ども達にどんなことを伝えたいですか?

いろんなことにチャレンジする気持ちを持ってほしい

現在、視覚障害者が自由に走り回れるスポーツはほとんどありません。だからこそ、ブラインドサッカーの練習で走り回った経験は、視覚に障害のある子どもたちの可能性を広げてくれるはずです。この経験を生かして、もっといろいろな活動ができるという気持ちを持ってほしいです。
ただ、それにはどうしても他の人のサポートが必要になります。そのためには、子どもが自ら動かなければなりません。たとえば健常者の友達を作るとか、会社であれば職場の人と仲良くなるための働きかけが必要です。ブラインドサッカーが、少しでもその手助けになればと思います。

今後の目標は何ですか?

視覚に障害のある人と健常者が交流する機会を増やしたい

ブラインドサッカーは、視覚に障害のある人と健常者が一緒にプレーできるスポーツなので、体験会や交流会などが定期的に開催できるようにしたいですね。体制が整っていない、認知度も低い、資金も必要など課題は山積みですが、支援してくれる企業や団体があればありがたいです。
また、ラッキーストライカーズ福岡の若いプレーヤーも育成したいので、教室に参加している子どもが選手に育ってくれると嬉しいですね。とはいえ、それはだいぶ先のこと。今はまず子どもたちの活動の範囲を広げ、自立した人材の育成にブラインドサッカーを役立てたいです。



 

ブラインドサッカーを通じて、広がる子どもたちのみらい

「さあ、ここまでおいで!」手を叩きながら堀田さんが声をかけると、子どもたちがゆっくり、おそるおそる声のする方向へ足を進める。少しずつ距離を伸ばしていく堀田さん。それでも子どもたちは、何度も繰り返していくうちに、笑顔いっぱいで堀田さんの元へ走れるようになった。子どもたちは、できなかったことが、できるようになる経験をここで積んでいる。保護者も「子どもはこの教室は楽しみにしています。一人じゃなく、友達や中学生の先輩たちとみんなで活動するのが楽しいみたい」と話し、「もっと開催してほしいですね」と付け加えた。
 九州ブラインドサッカー協会は、ブラインドサッカーの普及に努めるだけでなく、ブラインドサッカーを通じて、視覚に障害を持つ子どもたちの可能性という「みらい」を広げようとしている。
団体プロフィール

九州ブラインドサッカー協会

代表、渡辺修氏。2002年12月1日設立。福岡県を中心に活動し、ブラインドサッカーを通じた視覚障害児の健全育成および障害を持たない子どもに対する視覚障害者への理解促進に取り組む。2003年にアビスパ福岡の支援の下でブラインドサッカーチーム「ラッキーストライカーズ福岡」を設立。
ブラインドサッカーの競技力向上や各地で普及活動を展開し、競技人口を増やすほか、健常者と障害者が交流するイベント等を開催している。

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