サンビレッジ茜

厳しくも楽しい学びが育む、たくましいみらい

  • 成人女性

    素晴らしい活動だと思います!どんなことがあっても困難に立ち向かっていく立派な人を育てていただきたいです。

  • 厳しく、楽しく、たくましく!いいですね~。

    成人男性
  • 成人女性

    子ども達が楽しみながら自立心やたくましさを育む事ができる良い取り組みだと思いました。

  • 子供と退職後の教職員との学校外での関わりは、双方に良い影響を与えそうですね。時代が変わっても、大切なことをしっかりと伝えていく取組みは大事だと思います。

    中年女性
さまざまな体験を通じた次世代育成
「雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ……」有名な宮沢賢治の名文を、朗々と暗唱する子ども達。これは飯塚市の自然体験施設「サンビレッジ茜」で行われている集団教育プログラム「タフ塾」の一つだ。一般財団法人サンビレッジ茜の理事長・森本精造さんに教育内容や子ども達への思いを伺った。
「タフ塾」とはどんな事業ですか?

元教員のボランティアらが、子ども達の体力、精神力を育成

「サンビレッジ茜」の代表を務める森本精造さん

「サンビレッジ茜」の代表を務める森本精造さん

「タフな子ども育成塾」の略称です。タフ塾の目標は、体力、精神力ともにたくましい子どもを育成することです。
飯塚市の山間部にある自然体験施設「サンビレッジ茜」で、集団行動、宿泊を伴う集団生活を行います。
参加者は小学1年~4年生までの子どもで、施設の職員や地域のボランティアが「指導の三原則」に基づいた指導をします。これは「①やったことがないことはできない、②教えられていないことは分からない、③繰り返し行わなければ上達しない」という原則で、できなかったことができるようになることを目指し、指導を進めています。

具体的にどのような活動をされているのですか?

スキーや学習、体力・筋力アップなどにチャレンジ!

タフ塾では子ども達へのスキー教室と学習教室、自然体験教室の3つをプログラムの軸にしています。スキーを取り入れているのは、サンビレッジ茜には本物のスキーが1年中滑れる人工芝のスキー場があるからです。九州で唯一の本格的なゲレンデで施設職員や専門のスキーインストラクターの指導を受けながら練習します。
学習教室では元教員のボランティアに協力いただいて、学校の宿題やドリル、漢字の書き取り、朗読などに取り組んでいます。勉強だけでなく、体力と筋力のアップを目指して腕立て伏せや腹筋、ブリッジなどにも挑戦しています。
自然体験活動では、普段、子どもにあまり使わせないナイフや小刀を使って、鉛筆を削ったり竹を使ってお箸や笛を作ったりします。
このような活動を、約20名の子ども達と、隔週土日に一泊二日、合計8回連続で取り組んでいます。

「タフ塾」を始めるまでにどんな経緯がありましたか?

子ども達には学校外での学びも大切

私はもともと福岡県の教育委員会で、社会教育の仕事に携わっていました。当時、世の中が豊かになって、子どもが苦労や困難に立ち向かう機会の減少や、体力や我慢する力の低下が社会問題となっていたことから、放課後と休日の子ども達のために活動したいと思っていました。
その後、飯塚市の教育委員会に在職してから、放課後の子どもと高齢者が一緒に活動する機会を作っていったのですが、活動を進めているうちに、「学校教育ではなかなか体験できない異年齢の子ども同士の活動や地域の人との活動経験が、その後の人生において大切なのではないか」という思いが強くなり、退職後の2010年にNPO法人幼老共生まちづくり支援協会を立ち上げました。
2013年からはこのサンビレッジ茜を利用して、スキーや自然観察を中心にした日帰りのプログラム「タフな子どもの育成教室事業」を始めました。その後2015年にいったんNPOは解散しましたが、この度九電みらい財団の助成を受け、サンビレッジ茜の事業として今回実施に至りました。

回を重ねるごとに感じる子どもの変化はありますか?

繰り返し同じプログラムをすることで見えてきた子どもの変化

タフ塾を参加者固定で8回の連続活動にしたのは、同じ事に繰り返し取り組むことで、子ども達に「できないことができるようになる」ことを肌で感じてもらうためです。特に、スキーにははっきりと上達の変化が現れています。1回目のスキー体験では全くの初心者でも、2回目には中級コースから滑り降りる子もいました。学習教室でも何度も朗唱した「雨ニモマケズ」は第4回の開会式では全員が暗唱できました。腕立て伏せやブリッジが美しい姿勢でできるようになった子もいます。何度も繰り返すことで身についたのだと思います。
生活態度や行動では、話を聞くときはビシッと姿勢を整えて聞くように指導し、できるようになってきました。また年齢の上の子が下の子のお世話をしたり、下の子が上の子を慕って一緒に手伝いをしている様子も見られます。自然と子ども達の関係ができていると感じています。
子ども達の技術的、学習的な面を含め、生活態度や行動も変わってきていると思いますし、まだまだ変わっていってほしいと願っています。

タフ塾の課題は何ですか?

子ども達のモチベーションを高め、家庭での生活につなげていく

子ども達が飽きずに、興味関心を持って参加したいと思うようなプログラムを行うことが難しくて、重要な課題ですね。同じ事を繰り返すことで技術や学びは身につくのですが、マンネリ化する恐れがあるので、プログラムに変化を与えていく必要があると考えています。
塾の最終日には保護者を招いて発表会をする予定です。スキーでは一番上から滑れるようになった姿を見せたいですね。「雨ニモマケズ」の朗唱や子ども達の行動の変化も知ってもらいたいです。
 
子ども達には塾で芽生えた学習意欲を、家庭に持ち帰って続けてくれたら嬉しいですね。例えば朗唱や俳句を、家でも聞いてあげるとその子はきっと伸びるはずです。そして、家で覚えたものを塾でも指導者に認めてもらえると、子どものモチベーションは一層高まります。子どもの学びや体験活動が上達し、保護者からタフ塾の取り組みへの理解と協力をいただければ、目標の一つが達成できたと言っていいのかなと思っています。
今年参加してくれた子が、来年またこのタフ塾に参加したいと思ってくれるように、プログラムを充実させてしていきたいです。



 

「できないことが、できるようになる」 厳しくも楽しい学びが育む、たくましいみらい

小学生対象の宿泊を伴う研修は様々なものがあるが、手がかかる小学1~4年生のみを対象としたものは珍しい。一方で、基本的な生活習慣を身につけるのは9歳あたりまでの教育が大切という考えもある。
実際にタフ塾に参加した子ども達は、スキーはもちろん漢字の書き取りや百マス計算、俳句、朗唱、筋力トレーニングなどのプログラムに真剣に取り組んでいた。何度も繰り返して“できない”ことが“できる”ようになった、上達したという喜びを知ること。それが、子どもにとってみらいへの大きな糧になると信じて、タフ塾は子ども達を厳しく、楽しく指導していく。
団体プロフィール

一般財団法人 サンビレッジ茜

理事長・森本精造氏。一般財団法人サンビレッジ茜は、子どもの学校外の教育を行う団体として、放課後や休日の子ども達にスキー体験や自然体験、異年齢の子ども達の交流などの事業を行っている。
施設は、1990年に旧筑穂町が豊かな山の自然に囲まれた観光レジャー施設として開業。九州でオールシーズンスキーが滑れる唯一の人工芝スキー場やリフトをはじめ、宿泊研修施設や体育館、キャンプ場など多彩な施設が設けられている。飯塚市と合併後、2011年からはサンビレッジ茜が指定管理者となって運営している。

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